センシン食品(宮城県・名取市)

松前漬「ねばうま」

松前漬「ねばうま」

3.11を忘れない

国定公園に指定される福島県相馬市の松川浦に隣接する原釜漁港。かつて「日本一美しい漁港」としてその風光明媚さだけでなく、首都圏に近いことから「高級鮮魚出荷港」として全国に知られる存在でした。
年間で水揚げされる魚種は200を超え、種類、鮮度はもとより水揚げ後の魚の丁寧な「扱い方」にも定評がありました。

震災前の相馬松川浦港

そんな松川浦の魚を自ら目利きし、水産加工業を営んできたのがセンシン食品の高橋さんです。生まれも育ちも相馬で生粋の「相馬っ子」です。
代表の高橋永真さん(左)と息子の大善さん)

代表の高橋永真さん(左)と息子の大善さん

2011年3月11日。あの日、浜の加工場は全て流されてしまいました。地域の多くの方も犠牲となりました。 また市内の経済の約70%が漁業関係という相馬で、その産業が完全に破壊され、働き手の多くも県外に職を求めました。
震災後の相馬松川浦港)

震災後の相馬松川浦港

そんな中「もう一度この浜を元気にしよう!」と立ち上がったのが高橋さん。仲間を募り「NPO相馬はらがま朝市クラブ」を立ち上げ、相馬の浜、町の人々のつながりを「まずは朝市の開催して取り戻そう!」と開始しました。
朝市は毎週末開催され、市民や避難者の大切な交流の場になりました。

朝市の様子
合言葉は、震災前よりいいもの作ろう!

震災と原発事の影響による出漁規制で相馬の漁師も出漁できない日々が続きました。
現在も試験操業(※)が続いており、水揚げされる魚種も限定されます。

加工場の様子

※水揚げ後に検査し、安全である事を確認しています。2020年4月現在、231魚種が試験操業対象となり(福島県庁HPより)、ほぼ震災前の水揚げ魚種と変わらなくなりました。

試験操業のため、水揚げがない日も続き、そんな状況でも「相馬の水産加工業の灯火を消さない」とあきらめず、たとえ県外からの素材を使ってでも作り上げたのが、松前漬「ねばうま」でした。
ただこの松前漬け、素材は全国のつながりの中から高橋さんのもとに届けられた一級品。仕上がりの風味、ネバリは最高です。

「ねばうま」包材
素材の良さを生かし切る!

2018年、高橋さんはある決断をします。それは相馬水揚げだけでなく、近くの宮城県水揚げの魚も扱うこと。

これまでは相馬の魚の加工に限定していましたが、試験操業ゆえどうしても漁獲が安定せず、計画された生産がむつかしくなってしまったからです(センシンさんは鮮魚を加工しますので、水揚げがないと仕事がなくなってしまいます)。

そこで、相馬の自宅から車で約1時間、宮城県名取市の閖上に新たに加工場を設け、現在では相馬、宮城両方の旬の魚を仕入れ、「素材の良さを生かし切る」加工を続けています。

アジ
アジフライ